カテゴリ:論文入門( 12 )

慶大文の小論文

 慶大文の小論文について、傾向と対策を簡単に整理しておきます。
 
 ○出題形式
  ・課題文の理解を踏まえて見解を論述するのが基本です
  ・設問は2問で、年により違いますが計700字程度が目安です
  ・ただし設問の内容は毎年違います(解答パターンの画一化を回避したいのかも)
  ・課題文は法・経に比べて長めです

 ○出題テーマ
  ・過去2年は文学部らしい出題(文学・表現とは何か?)が続きました
  ・文学への関心と理解をはかり、併願者と差異化する意図なのかもしれません
  ・そのためか2008年出題は難解で小論文の受験者平均点も45.55点に下がりました

 ○対策
  ・マニュアル依存であらかじめ解答パターンを決めるのは逆効果です
  ・設問の要求を確認し、それに素直に答えるようにして答案を構成しましょう
  ・課題文の細部にこだわらず、設問との接点を中心に読み取るようにしましょう

 過去2年の出題を考えると、文学、表現等の本質について考えておいた方が良いでしょう。とは言うものの、これでは具体的なアドバイスになっていないので、以下にランダムな問いかけを並べておくので、それに対する自分自身の考えをまとめておきましょう。的中するとは思いませんが、ウオーミングアップにはなるかも・・・

 ①インターネット時代に新聞や雑誌の存在意義はあるのか?
 ②活字による表現と音声・映像による表現の違いは何か?
 ③言葉の可能性と限界のどちらを重視すのか?
 ④メールによるコミュニケーションの功罪は何か?
 ⑤「お金では買えないもの」とは何か?

 なお、2007年出題の復元合格答案が、このブログの奥地に潜んでいるので、以下にリンクをはっておきます。今年はアナタが書く番です!

 ○慶大文の復元合格答案(2007年出題)

 
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by sosronbun | 2009-02-09 12:03 | 論文入門

KYへの過剰反応

 直前講習に時期になり、これまで小論文対策をしてこなかった人たちの文章を読む機会が増えています。そうした中で気づいたのが、KYへの過剰反応とも思える文章の多さです。某首相の影響で最近のKYは「漢字を読めない」ことなのだそうですが、ここでいうKYは「空気を読めない」というやつです。そして、それへの過剰反応とは、周囲から浮くことを恐れて自分の考えをなかなか言わないことです。
 たとえば、裁判員制度がテーマだったとします。自分自身はこれに反対なのですが、延々と賛成派の主張を紹介し、一定の理解を示して、ようやく反対の主張や理由に入る・・・そんな感じの答案が、KYへの過剰反応の典型例です。別に採点者は「あなたは空気が読めないねえ」などとは言わないので、反対なら反対だとしっかり主張すればよいのに、まず相手に合わせようとするのは、なぜなのでしょうか?
 そうではなく、まずは自分の考えを固めるべきです。その上で、相手の主張にも耳を傾け、理解してもらうべく説明を掘り下げたり、必要に応じて考えを修正していけば良いのです。受験生には罪がなく、世間に流布する小論文のマニュアルが「確かに・・・しかし・・・」を強調してきた結果なのかもしれませんね。KYへの過剰反応を避け、「私から、あなたへ」という方向性で考え、表すようにしましょう。「あなたがいるから、私がいる」というような他者依存的な関係は、恋愛はともかく小論文では害が大きいと思います。
 KYをおそれず、自分が考えたことを自由に表現しましょう!
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by sosronbun | 2009-01-26 23:28 | 論文入門

論点のしぼり込み

 先週で直前講習を終えたのですが、これまで小論文の対策をしていなかった人の答案を読む機会が多くありました。ある程度は想定どおりだったのですが、「緊急手術」が必要な人も少なくなかったので、入試本番に向けて特に留意すべき点を一つだけあげておきます。
 もっとも目立ったのが「論点過多」ともいえる答案です。たとえば、課題文の論評をするときや自己の主張を説明するときに、それぞれの根拠を数多く列挙するものです。「ヘタな鉄砲も数打ちゃ当たる」というわけではないと思いますが、とにかく知っていることや考えたことを脈絡なくあれこれあげるのです。それを一つの文章に盛り込もうとするため、文章が長く・わかりづらくなる「副作用」もみられます。
 そんな人に、2006年の慶大経済の設問を紹介しましょう。
 課題文は遺伝子診断の利点を三つ挙げていて、それに対して反論するのが設問の主旨です。その中で「三つの事例の中から一つを選び、課題文の主張にたいして説得的な反論を加えなさい。」との表現があります。ここでは「一つに選び」と「説得的な」がリンクしている点に着目してください。反論の字数は実質的には300字程度です。その短いスペースに、三つの利点それぞれに対応した反論をすると、各100字しかありません。一方、設問に沿って「一つ」にしぼり込めば、300字使えるため内容、理由などの説明を掘り下げ、説得的な反論に仕上げることができるのです。
 大学側が設問の中でこうした注文をつけたのは、それまでの入試でも論点過多で説明が浅い答案が多かったからだと思われます。知識の量が問われる他教科では、知っていることを数多くあげると高得点になったかもしれません。しかし、小論文では読み手に対する説得力の有無が評価を左右します。いろろなことをあげた答案を読むと、「よく知っているなあ」と思うと同時に、それぞれをどこまで理解し、考えているのか不審に思うことも少なくありません。
 自分がよく理解し、よく考えていることを相手に伝えるには、それなりのスペースが必要となります。そのスペースが限られている場合は、論点をしぼり込むしかないのです。それは優先順位の低い論点を捨て、もっとも重要度の高い論点を選ぶことであり、「与えられた情報を疑う力」とともにリテラシーの基本の一つともいえます。
 対策が遅れた人だけでなく、ブランクがあってポイントを忘れてしまった人も、授業でボクが言ったことを思い出してくださいね。
 

 
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by sosronbun | 2008-02-04 00:32 | 論文入門

初心者へのアドバイス

 直前講習の時期は、これまで小論文の対策をしてこなかった「初心者」に出会います。「初心者」といってもいろいろで、けっこう良い答案を書く人も少なくありません。なので、「初心者」だからと言ってあせらず、限られた時間の中でできることから始めるようにしましょう。
 もっとも大切なことは自分の受ける大学・学部の出題傾向をおさえることです。「初心者」の中には論文のマニュアルやネタを求めて、それらで何とか対応しようと考える人がいます。しかし、出題は大学や学部によって異なるので、一般的な対策を講じてもあまり意味がありません。
 たとえば、あるマニュアルは課題文の要約を求めますが、設問がそれを求めていないときは要約は不要です。設問の求めに応じるのが解答の基本です。また、ネタ(具体例)についても、むやみに使えばよいというものではありません。具体例は主張を説明する手段の一つで、それを使って何を説明するのか趣旨・意図が大切です。
 blogのアクセス解析をすると、検索ワードでもっとも多いのが「小論文 書き出し」という組み合わせです。受験生だけではないのかもしれませんが、一般的に書き出しに悩む人が多いようです。だから、「要約からはじめよ」などという相手(設問)を無視したマニュアルが横行してしまうのでしょう。
 悩みはよくわかりますが、絶対的な解答方法や書き出しなんて「ないっ」と覚悟を決めてください。それよりも、設問に応じて何を答えるべきかを考える柔軟さと解答方法の多様性を身につけましょう。入試までわずかですが、まだ時間はたっぷりあります。まずは過去問をながめて、相手が何を求めているかを確認してみてください。
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by sosronbun | 2008-01-27 15:37 | 論文入門

不全感と向き合う

 予備校の授業もいよいよ後期に入ります。夏期は時間がなく小論文に取り組めなかった人、これから本格的に小論文に取り組む人、スタートライン・目標やいまの状況・気持ちは、人それぞれだと思いますが、前向きに楽しみつつがんばっていきましょう!
 そんなときに不全感だなんて、似つかわしくない表現ですね。でも、小論文の基本はタイトルにある不全感と向き合うタフさを身につけることです。辞書的にいえば、不全感とは完全ではないことです。小論文に限らず、文章や表現に完全なものなどないとボクは考えます。不完全だからこそ、その不足をつく他者の言葉を引き出し、相互の理解や思考を深めていきます。
 無謬(むびゅう)性を誇ることは自己の正当化にはなっても、他者との対話や議論を排除し独善をもたらします。それが人間や社会を誤った方向に導いた例をあげればキリがありません。誤りを含めて不完全な自分をさらし、相手からの指摘を参考に自分の主張やあり方を見直していく・・・人生や社会はこのような不全感をめぐる対話や議論を糧として充実していくのです。
 不全を認め、それを克服する営みは小論文の基本です。どんな問題でも明確な答えを出せないかもしれません。また、とりあえず答えを出しても、何だか疑わしいこともあるでしょう。某人気番組ではありませんが、「スッキリ~」といきたいところですが、そうはいかないところに人生や社会そして小論文のおもしろさがあるのです。
 あーでもない、こーでもないと思い悩み、なかなか答えが出ない不全感と向き合い、それを楽しみましょう!その経験が受験だけでなく、これからの人生にもプラスになると思います。
 
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by sosronbun | 2007-09-04 01:02 | 論文入門

議論を踏まえて、自由に論じる

 一昨日から横浜校での夏期講習が始まっています。サッカー・アジア杯敗戦のショックを乗り越えて、きちんと前向きに授業をやっています。
 第1日に「公共化する身体」という慶大法の2003年出題を取り上げました。この問題の特色は「筆者の議論を踏まえて…自由に論じなさい」という設問にあります。「踏まえる」と「自由に」が矛盾する感じがするので、戸惑う受験生が少なくありません。
 そこで、受験生の疑問を解消しつつ、解答のポイントを解説しました。設問は、第一に課題文の「公共化する身体」という考え方に対する論評を求め、第二に「公共性の問題一般」について「自由に」論じることをを求めています。 「踏まえる」は前者に、「自由に」は後者に対応していることがわかりますよね。要するに、このような設問に対応して、解答すれば良いのです。
 おそらく答案の前半は、筆者の議論を引用しつつ、あるいは要約した上で、その考えを論評することが中心になります。後半は、筆者の議論から導き出される「公共性とは何か?」を中心に論述することになるでしょう。その際に注意すべきことがあります。それは、前半と後半との脈絡をつけることです。設問が「それと関連づけて」と表現しているのは、そのためです。
 論評で筆者の議論を肯定的に受け止めた答案は、後半の論述では公共性のあり方への疑問を示すことになるでしょう。逆に、否定的に受け止めた答案は、公共性の大切さを説くことになるでしょう。そのようにして、「踏まえる」と「自由に」は矛盾しないどころか、一貫して展開することになるのです。
 出題者・大学側は実によく考えて出題しています。設問、課題文の内容にかかわらず解答方法をワンパターン化することの「恐怖」を実感してください。論文の型なるものを信じるものは救われず、時間はかかりますが、その場で考える力をつけることこそ必要なのです。
 「走りながら考える」のはサッカーだけでなく、小論文対策でも、そして人生でも基本なのではないかとボクは思います。
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by sosronbun | 2007-07-27 13:48 | 論文入門

オープンスペースの大切さ

 今夜のサッカー・アジア杯が気になりますが、その話ではありません。
 通常の小論文試験では課題文が与えられ、その理解に基づいて自分自身の見解を展開していきます。2003-2005年の慶大法の論述力試験の設問が、「筆者の議論を踏まえて、自由に論じなさい」と表現しているのも、この基本に沿ったものです。
 インプットを重視しすぎると、課題文の理解で「いっぱい、いっぱい」になり、その後の自由な展開に苦労します。実際に受験生の答案を読んでいると、課題文の理解は的確なのに、自己の見解の論述部分で「失速」する答案が多いことに気づきます。
 自由に論じるためのコツが、相手のオープンスペースを見つけ出す・生み出すことなのです。たとえば、筆者は現状の問題点をあげるだけで何の対策も示していません。この場合、対策がオープンスペースであり、筆者がケアしていないため自由にボールを動かす、いや自由に考えることができます。
 小論文は筆者と自分との「対話」です。相手の話をよく聴きながらも、つねにオープンスペースを探り、そこに言葉を投入することで「対話」はノってきます。安全なパス回し(無難な言い回し)だけでなく、ときには相手が嫌うところ飛び込み、「くさび」を打ち込むことも必要です。それによって、ゲーム(対話)が動き始めます。オシム監督のいう「危険なプレイ」は小論文でも必要なのです。
 なんだか、やっぱりサッカーの話(?)になってしまいましたが、賢明な受験生の皆さんはこのたとえを理解してくれると思います。サッカーも小論文も相手へのリアクションだけでなく、オープンスペースを見つけ出し、生み出し、そこで「自由」を発揮することで面白くなるのです。
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by sosronbun | 2007-07-13 18:33 | 論文入門

まもなく参議院選挙

 まもなく参議院選挙が始まります。受験生の皆さんは有権者ではない人が多いと思います。何だかやかましいだけで、あまり関心はないかもしれません。しかし、こういうときこそ新聞やテレビをしっかりチェックしましょう。
 ちなみにボクの自宅は朝日新聞をとっています。連日3面に掲載されている参議院選挙(07参院選 選択のとき)は、現代の日本社会の課題をデータとともに簡潔に解説していて、受験生の参考になると思います。また、今日の朝刊4面には、格差社会についての広井良典さんの文章や、教育改革に関する討論(福井秀夫さんVS.堀田力さん)が掲載されています。いずれも読んでおきたい記事です。
 他紙でも同様の特集記事があると思います。29日の投票日までの間、自分の家や寮でとっている新聞をチェックすることを勧めます。情報は誰かが与えてくれるのを待つのでなく、自分で探しに行くことが大切です。ただ、受験生の皆さんは何だか忙しそうなので、よくないと思いつつも、このようなアドバイスをしてしまうのです。
 ボクが新聞の活用を勧めるのは、小論文の出題テーマが同時代的だからです。課題文や資料を理解するには、いまの社会や世界に対する基礎的な知識と、何よりも関心が必要です。記事を読んでもわからないことがあると思います。でも、わからないからこそ学び、考える楽しさがあるのかもしれませんね。
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by sosronbun | 2007-07-09 23:05 | 論文入門

天声人語は使えるか

 このあいだの「とんでもアドバイス」の続きになりますが、小論文対策として天声人語をありがたがる傾向がこの業界には根強くあるようです。天声人語を「読む」くらいならわかるのですが、これを「要約する」とか「筆写する」など活用方法も過熱しがちです。
 さすがに「筆写する」には驚きました。良い文章を何度も書き写せば、自然と文章がうまくなるという趣旨ですが、期待だけで根拠はまったくありません。筆写するなら般若心経の方が生きていく上で役に立つかも。筆写が趣味なら禁じませんが、小論文対策としては無意味だと悟ってください。
 「要約する」も疑問です。そもそも天声人語はエッセイです。エッセイとは徒然草のように思いついたことを連ねた文章で、主張を論理的に展開したものではありません。一方、要約は課題文の論旨(主張と説明の骨組み)を再現するもので、その学習素材としてエッセイは不向きなのです。
 もちろんエッセイが出題されることもあります。しかし、その場合は、要約ではなく内容に関して自由に論じさせる問題が多いはずです。志望大学・学部の出題傾向がそうであれば天声人語は使えますが、そうでないときに過度に用いるのは対策としてはムダです。
 相手を的確にとらえて、適切な対処をするのが対策の基本です。朝日新聞を使うなら天声人語でなく、オピニオン欄の「私の視点」、「異言新言」(土曜日)、「耕論」(日曜日)の方が、主要大学の出題傾向に近いと思います。
 
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by sosronbun | 2007-07-06 23:00 | 論文入門

とんでもアドバイス

 駿台では「個人論文指導」といって、授業終了後に生徒の質問に対応する時間があります。質問の内容は何でもありで、医系論文ではこの時間を利用して模擬面接やグループ討論をやることもあります(後期)。授業が一方通行になりがちなので、生徒の生の声が聞ける個人論文指導は、ボクにとってはとても大切な時間です。
 その中で、生徒が他の塾や予備校の指導方法についてたずねてくることもあります。それぞれのやり方は尊重したいのですが、ときどき「え゜っー…」と絶句し、腰を抜かすような「とんでも(ない)アドバイス」があるのも事実です。生徒がそれを信じ込んだらタイヘンなので、そんなときは、さすがに明確に否定します。
 たとえば、「答案の文字が濃くないと読んでもらえない」というヤツ。ボクも老眼が入ってきました。薄い文字は読みづらくて、メガネはずして読まなければならないので、ちょっと面倒だという気持ちは理解できます。でも、それだけで読んでもらえないということは「ない」でしょう。採点する大学の先生のグチならばわかりますが・・・
 その亜流で、「~だ」「~なのだ」などの文末は「偉そうなので、読んでもらえない」というのもあるようです。読んでもらえないというのは「門前払い」ということなので、受験生は大いにビビります。しかし、冷静に考えてみましょうね。「偉そう」かどうかの基準は何なのでしょうか?採点者の度量(?)によって左右されるような基準がそもそも成り立つのでしょうか?前述の薄い・濃いの基準も同様に主観的で、こんな採点基準の大学があったら社会的にも大きな問題になるでしょう。
 とんでもアドバイスは他にもたくさんあります。生徒から聞かされるたびに、「あんたら、しっかりしてよ」と生徒でなく同業者を叱責したくなります。え?最後の一文は文字が薄すぎ、ですか?
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by sosronbun | 2007-07-04 23:58 | 論文入門