赤ちゃんポスト

 医学部の中にはグループ討論を入試科目に入れているところもあります。これに対応するため、医系論文の授業終了後に模擬グループ討論をやってみました。討論のやり方にはボクのノウハウが含まれるので「ひみつ」ですが、テーマくらいは公開します。
 今回のテーマは、2008年度入試でもっとも出題が多かった「赤ちゃんポスト」です。「赤ちゃんポスト」は2007年5月に熊本市内の病院が開設したもので、「こうのとりのゆりかご」が正式名称です。なお、駿台・医系論文のテキストにも関連記事を掲載してあります。
 グループ討論として取り上げたため、あえて賛成または反対の立場で論じてもらいました。一般的に、賛成派は何よりも赤ちゃんの救命を重視します。これに対して、反対派は親の無責任とその拡大を懸念します。いずれにも「理」があり、簡単に決着できない難問です。
 討論を続けていくと、いくつかの重要な論点がみえてきます。たとえば、親の責任を明確にするために、「赤ちゃんポスト」の利用は匿名ではなく実名にしたらどうかとの意見が出ました。単に賛否と根拠をあげるだけにとどまらず、こうした個別具体的な議論に入っていくことは、討論がうまく展開していることを表しています。
 ただし、賛成派の場合、簡単に実名制を受け入れてはいけません。そもそも「赤ちゃんポスト」の利用を匿名としたのはアクセシビリティ(利用可能性)を高めるためです。実名制は利用の妨げとなり、匿名制ならば助けられた赤ちゃんの命を奪うおそれもあるのです。賛成派の最大の根拠は赤ちゃんの救命です。それを損ないかねない「誘い」に乗ってはいけません。
 大学が「赤ちゃんポスト」を出題したのは、「命を救う」という医療の目的に対する理解・意欲の有無・程度をはかりたいからなのかもしれません。だから、反対派も親の無責任を糾弾するだけではなく、「赤ちゃんポスト」以外に救命できる道を探り、提示しなければなりません。賛成・反対のいずれの立場であっても、育児放棄、虐待、子殺しなどの災難から何とかして赤ちゃんを助け出したいという思いは同じです。
 そうした熱意に基づき、冷静に議論を進めていけるか否かが、グループ討論の成否を決めます。次回もお楽しみに!
 
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by sosronbun | 2008-11-16 22:59 | 医系論文


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