弘前大学医学部のAO入試では、医学部で行われているチュートリアル教育の紙上版のようなテストが実施されるそうです。入試要綱ではこれを「ケーススタディの自学自習」と表記しています。そもそもチュートリアル教育とは何かがわからない人もいるかもしれません。そこで、この大学で実際に使用されたシナリオの一部を以下に紹介しましょう。
「中学2年生の弘子さんは、部活でソフトテニス部に所属しています。弘子さんは牛乳や肉が嫌いなど食べ物に好き嫌いがあり、また運動の後にペットボトルの炭酸飲料を飲み過ぎて、あまり食事ができないこともありました。……この頃はすぐに疲れてしまい、立ち止まって休むことさえあります。 とうとう部活の練習中に気分が悪くなり、保健室で休憩することになりました。保健室の先生は弘子さんの顔色をみて医者に行くようにといいました。昔から顔色は白いほうでしたが、そう言えば「この頃少し顔色が悪い」と皆から言われていました。 次の日、弘子さんはお母さんと一緒に在府内科小児科へ行きました。診察室にいたのは男の先生で、初潮の時期や生理の期間など、中学生の女の子には聞けないようなことを平気で聞きます。それに指の爪をみて「きれいな爪だね」と言った時には,弘子さんは背筋がぞっとしました。……」 (中根明夫「「チュートリアル教育」-勉強の仕方を学ぶ-」「弘前大学における教育」-最近のトピックス-) 皆さんはこの中にどのような問題を発見したでしょうか?求められているのは主体的な問題発見であり正解はありません。「正解」は一人ひとりの頭の中にあるのです。 これは問題の[発見→分析→解決]の力をつける総合学習にも近いものといえます。ゆとり教育や総合学習は学力低下批判にさらされましたが、それにより、こうした知的探求方法に習熟する機会を子どもたちが失ったことはかえすがえすも残念です。 慶大法2006年の出題は、若者の「問う能力」の欠落を指摘し、これを「知的難民」と表現した課題文が出題されました。チュートリアル教育が必要なのは医学部だけではありません。
by sosronbun
| 2008-09-04 16:56
| 医系論文
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