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慶大法の私的「解答速報」

 設問分析は下の記事のとおりです。その続きとして、要約と論述のポイントを簡潔に記します。なお、設問分析を含めて問題を吟味した内容ではない私的なものなので、詳しくは18日夕にアップされる駿台の解答速報を読んでくださいね。

 まず要約ですが、設問分析で解説したように「明治末期以降の「知識人」と一般の人々との関わり」が中心です。キーワードは「超越」「遊離」で、「知識」「思想」が一般の人々の生活・意識から「遊離」したというイメージの広がりをおさえなければなりません。次に、これに関する「二つの立場」をおさえることが大切です。一つは「超越」を肯定的にとらえ、「知識人」が「啓蒙的な役割」を果すべきとする立場です。もう一つは、「日常に関わらない」つまり「遊離」を否定的にとらえ、「知識人」の「知識」「思想」の意義を「希薄で曖昧なもの」とする立場です。「知識人」の心中で「二つの立場」は並存し、その背景に「西欧伝来の知識」があると筆者は指摘します。
 昨日の書き込みで、要約は論述の準備行為だといいました。今回の出題は、「知識人」と一般の人々との関わりについて、以上のような論点整理をしたといえます。そして、こうした準備を経て、いずれかの立場を選択して論述をしていけば良いのです。設問分析で解説したように、「現代社会に生きるあなた自身の視点」での論述が必要です。
 ひょっとしたら、出題者は現代社会における「新書」の洪水に違和感を抱いたのかもしれません。「新書」を読むのは一般の人々(大衆)です。売れる本を書く・作るには「超越」「遊離」は禁物で、彼らの生活に関わるように、わかりやすくなければなりません。そのようにして生産されたものは、筆者が2段落で定義する「知識」「思想」なのでしょうか?そこには「二つの立場」の「並存」ではなく、現実生活に媚びた「知識」「思想」を見て取ることができます。直感的ですが、そのような問題意識が出題の背後にあるように思えます。
 今回のテーマについてはボク自身も思い出があります。20年ほど前に大学院の修士課程を終えて博士課程に進まなかったのは、少なくともボクの周辺の学問が、現実の生活からはなはだしく「超越」「遊離」していたからです。ボクが大学院時代から市民活動に関わり、現在に至るまでその中での著述に力を入れてきたのは、一般の人々の日常・生活に関わらない「知識」「思想」に意味を見出してこなかったからです。科学技術を含めて現代社会に目立つのは「並存」ではなく「超然」であって、その危うさを指摘することもできます。
 いずれも筆者の認識に否定的な立場ですが、肯定的な立場で論じることもできます。これらのことから、どのような論述ができ、また論述すべきだったかがわかると思います。

 良い問題ではありますが、こうした問題意識と経験のない受験生にとっては難題だったと思います。なので、要約を通じて論点整理をし、それに基づいて自分の見解を述べることができていれば、それだけで高い評価になるかも・・・
by sosronbun | 2008-02-16 23:06 | 過去の記事


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